2月のみかづき。

【日福課題】 精神保健福祉士 と 権利擁護?

【追記】最近、国家試験も近いからか、検索からこの記事を見てくださる方が多いので、少し追記を。

2013年から2015年まで、日本福祉大学の通信学部で、精神保健福祉士の資格をとるために勉強していました。その時に書いた、課題を載せています。

自分の記録のためと、もし同じ課題に取り組む人から、意見など聞けたらいいなぁと思ってブログの記事として載せています。

 

「自分で決めるってどういうこと?」

 

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 私はソーシャルワーカーとして、自己決定を尊重した権利擁護を行う上で、3つ大切にしなければならないことがあると考える。精神保健福祉援助演習テキストの事例16「権利擁護」を読んで考えたこと、成年後見制度との矛盾を踏まえて以下に述べる。

 まず1つ目は、本人の希望や意見をしっかりと聞くことである。私が日頃接している利用者や、事例のAさんの場合もそうだが、成年後見人制度を利用する人は、自分の意思というより、周囲の人の勧めや意見による事が多いように思う。「この人は判断能力がないから」「どんな事をするか分からないから守らないと」という考えから、家族や支援者が必要だと判断し、本人の希望を充分に聞く事なく、制度の利用を進めていってしまう事があるように思う。

 また利用の目的としても、本人の権利を守るというよりも、現実には金銭管理のためや施設やサービスの利用のため等、周りの事情が先行していることが多いように感じる。成年後見人制度を利用するということは、本来その人の権利を最大限に守るために、その人の権利を代理する人を選任することであり、その人のこれからの人生にとって大きな影響を与える。成年後見人を利用する=判断能力が全くない、ということでは決してない。本人の希望をしっかりと聞き、その上で制度を利用するか、またどのように利用していくのか、慎重に検討していくことが必要だ。

 ソーシャルワーカーは、自身の行動が本人ではなく周囲の人のための行動になっていないか常に意識しなければならない。

 2つ目は、利用者が自己決定出来るように丁寧に説明し、複数の選択肢を提示した上で、安心・納得して決めることが出来る環境をつくることである。ソーシャルワーカーの倫理綱領の倫理基準の自己決定の尊重という項目の中にも、「a.クライエントの知る権利を尊重し、クライエントが必要とする支援、信頼のおける情報を適切な方法で説明し、クライエントが決定出来るように援助する。」とある。

 1つ目とも関連してくるが、成年後見人制度を利用する時に、本人というより家族に向けて説明をしがちであるように思う。今回このレポートを書くにあたって、実際に成年後見人制度を利用している利用者数名に、成年後見人制度がどのような制度か理解しているか尋ねた所、制度の内容をしっかりと理解している人はほとんどいなかった。皆、誰かに強要されて利用開始したり、利用していることで何か特別不満を感じていたりすることはないと言うが、自分の権利が誰か他の人によって代理されているということに対する自覚がないままに制度を利用している。「自分で決める」という事は、とても難しいことである。まず判断するための情報を手に入れ、それをしっかりと理解し、自分で判断して選ばなければいけない。また選ぶ際に、周りから批判・反対されているような状況では、自分の意見を言うことをためらうこともある。自己決定を尊重するためには、ソーシャルワーカーがその前提として、上記のような説明やその他決定のための援助を行うことが必要となってくる。

 最後に、利用者の「権利」を意識して支援を行うことである。別のスクーリングで、基本的人権は全ての人が生まれながらにして持っている基本的な人権であり、国や誰かが侵すことも奪うことも出来ない、その人だけのものであり、その特徴として普遍性・固有性・不可侵性の3つがあることを学んだ。

 成年後見人制度は、「判断能力の不十分な人」を保護するためのものとあるが、上の基本的な人権の特徴と照らし合わせると、矛盾しているようにも思う。利用者の希望を聞き、納得のいく形で利用すれば、利用者の「自分で選択する」権利、「自分で決める」権利を尊重するための手段として、成年後見人制度を利用することも出来ると思う。だが、本人の意思や希望が反映されないでこの制度を利用すれば、基本的人権を侵すことに繋がる恐れがある。

 「権利」は目に見えず、普段私たちは当たり前にあるものとして考えがちである。ソーシャルワーカーは、利用者の権利を擁護することも、侵すことも出来る立場にいる。その事を自覚した上で、支援を行わなければならない。

 ソーシャルワーカーとして働く上で、「人生の主人公は本人である」ということ本人主体の支援を行うことが大事だとは分かっているが、実際に支援を行う上で先へ先へと進めがちで、本人を置いていってしまっているような時があるように思う。今回このよう無意識に行っていることも、利用者の権利侵害と言えるかもしれないことに気付き、反省したと同時に人の権利に関わるということに対する怖さや責任を感じた。利用者の権利を擁護することはソーシャルワーカーが忘れてはいけない大事な役割である。権利とは何かについて考え続け、利用者の希望をしっかりと聞き、本当に利用者のためになる支援を行っていきたいと思う。

 

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 【日本福祉大学、課題シリーズ】

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