2月のみかづき。

【アメリカ大統領選挙】ヒラリーの敗北宣言スピーチが完璧すぎて、鳥肌がたった。【ざっくり訳つき】

こんにちは。

長かったアメリカ大統領選挙が、まさかの結果とともに終わりました。まだ信じられない・・・。

f:id:mikachanko4281196:20161110032053j:plain

クリントン氏が敗北宣言 トランプ氏との協力表明 写真8枚 国際ニュース:AFPBB News

敗北した候補者、つまりヒラリーは、その日の内に Concession Speech (敗北宣言)をしなければいけません。

きっと昨日眠るまでは、ほとんどの人がヒラリーが勝つだろう思っていた中のこの結果。本人だって最後まで「まさか」と思ってたはず。

そんな中で、自分のサポーターたちを前に「敗北宣言」をしなくちゃいけない。

一体どんな顔をして皆の前に立つんだろう、どんなことを話すんだろう。気になってテレビの前で、そわそわと待っていました。

 

そのスピーチは、今まで聞いたどのスピーチよりも、痛くて力強かった。もう、すごかった。勝手なお世話だけれど、是非みんなに聞いてもらいたいと思ったので、紹介していきます。

 

1. Pain: "This is painful, and it will be for a long time." 

スピーチから、まず感じたのは Pain ( 痛み )。女性初の大統領という期待を背負いながら、1年半にかけてキャンペーンをしてきて最後の最後に、こんな形で終わるなんて。明日目が覚めた時に、自分が大統領になった明日とそうじゃない明日の違い。もう想像するだけで、すっごく痛い。

時間になって、笑顔で会場に入ってきたヒラリー。大歓声に Thank you と答えながら、、そして素直に「負けてごめん」とスピーチの始めにサポーターに対して謝ります。これはとても印象的でした。

I hope that he will be a successful president for all Americans. This is not the outcome we wanted or we worked so hard for, and I'm sorry we did not win this election for the values we share and the vision we hold for our country.

(ざっくり訳:私は、トランプ氏がすべてのアメリカ人にとって良い大統領になることを願っています。今回の結果は、私たちが望んでいた、私たちが共に目指して来たものではありません。私たちが共有していた価値観やビジョンをもってして、選挙に勝てなくて、ごめんなさい。)

 

I know how disappointed you feel, because I feel it too. And so do tens of millions of Americans who invested their hopes and dreams in this effort. This is painful, and it will be for a long time.

(ざっくり訳:あなたたちが、どれだけがっかりしているかは分かっています。何故なら私も同じ気持ちだからです。そして希望や夢をこのキャンペーンに込めてくれていた多くの人たちも同じ気持ちだと思います。本当につらいです。そしてこのつらさは、これから長い間に渡って続いていくでしょう。)

disappointed, painful の言葉がすごく、実感をもって伝わってきます。ずっと応援して来たサポーターだってものすごく悲しいし、本人もものすごく悲しい。何年も、今日のことを思い出すんだろうな。。

 

2. ACCEPT: "We accept the result and then look to the future."

 しかし痛みだけでは、前に進めません。悲しみを共有したあとは、この結果を受け入れて、自分たちが次にできることを呼びかけます。

We have seen that our nation is more deeply divided than we thought. But I still believe in America, and I always will. And if you do, then we must accept this result and then look to the future. Donald Trump is going to be our president. We owe him an open mind and the chance to lead. Our constitutional democracy enshrines the peaceful transfer of power.

(ざっくり訳:私たちは、この国が私たちが考えていた以上に分断されていたということを知りました。しかし、私は今でもアメリカという国を信じています。そしてこれからもそれは変わりません。もしあなたも同じ気持ちならば、今回の結果を受け入れて、未来に目を向けなければなりません。ドナルド・トランプが私たちの大統領になるのです。私たちは心を開いて、彼がよい指導者になるチャンスを与える義務があるのです。私たちの立憲民主制は、平和的な政権移譲を保障しているはずです。)

ちなみに、'enshrine'という単語は、'shrine'という言葉からも感覚的に伝わってくるかように、1.〔神聖なものとして〕祭る、安置する からたぶん派生して2.~を正式に記すという意味にもなるんですね。憲法っていう不可侵のところにしっかりと書かれていて守られているから、それを破ることは許されない。

We don't just respect that. We cherish it. It also enshrines the rule of law; the principle we are all equal in rights and dignity; freedom of worship and expression. We respect and cherish these values, too, and we must defend them. 

(ざっくり訳:私たちはこのことに対して敬意を払うだけれはなく、いつも心にとめておかなければなりません。立憲民主制であるということは、法の支配、権利や尊厳において全ての人が平等であるという原則、信仰や表現の自由をも保障しているのです。私たちはこれらの価値観に対して敬意を払い、心にとめ、これからも守っていくのです。)

 ”民主主義”の価値観を大事にしているアメリカ。その民主主義で決まった今回の結果を否定したりひっくり返そうとせずに、ちゃんと「自分たちが決めた」結果として、責任を持って受け止めることを強調しているように感じました。

 

3. KEEP FIGHTING: "Please never stop believing that fighting for what's right is worth it."

そしてスピーチの最後には、若者、特に女性に向けてのメッセージが力強く語られました。今回自分が負けたことによって、「こんなに頑張ってもダメなんだ」「やっぱり変えられないんだ(女性に関して)」って思って欲しくない、という気持ちがあったような気がします。

I've had successes and setbacks and sometimes painful ones. Many of you are at the beginning of your professional, public, and political careers — you will have successes and setbacks too.

This loss hurts, but please never stop believing that fighting for what's right is worth it.

It is, it is worth it.

(ざっくり訳:今まで成功も挫折も経験してきました。その中には大きな痛みを伴うものもありました。みなさんの多くは、自分のキャリアのはじまりにいると思います。これからみなさんも、成功と挫折を経験すると思います。

今回の敗北は、とても辛いものです。でもお願いですから、「自分が正しいと思うことのために戦う」というのは価値のあることだということ、信じ続けて欲しいのです。)

   

Because, you know, I believe we are stronger together and we will go forward together. And you should never, ever regret fighting for that. You know, scripture tells us, let us not grow weary of doing good, for in good season we shall reap. My friends, let us have faith in each other, let us not grow weary and lose heart, for there are more seasons to come and there is more work to do.

(ざっくり訳:だって、私たちは "stronger together"であり、一緒に前に進んでいくのだと信じているから。そしてそのために戦ったことを、絶対に後悔しないで。みなさんご存知のように、聖書にはこうあります。「正しい行いをすることに疲れ果ててしまわないようにしましょう。失望せず、あきらめずにいれば、やがて祝福を刈り取る日が来るからです。」みなさん、お互いを信じて、疲れ果てず、心を失わずにいてください。なぜなら、私たちにはまだまだたくさん、やるべきことがあるからです。)

 

 スピーチの最後は、聖書を引用して、サポーターを鼓舞しています。

「正しい行いをすることに疲れ果ててしまわないようにしましょう。失望せず、あきらめずにいれば、やがて祝福を刈り取る日が来るからです。」

うん、今回のスピーチにぴったりの言葉だなぁ。

 

負けたあとに出来ること。

ここまで書いてきてあれなのですが、私は別にヒラリーを応援していたわけでもないです。むしろあまり好きではありませんでした。だけれど、1つのスピーチとしてもう見事すぎて。興奮して、ここまで書いてきました。(今夜中の2時ですよ!)

大統領選挙の中での敗北宣言ではあるけれども、「負けた人」のスピーチとして本当に最高にかっこよかった。

どれだけありえなくても、信じられなくても、痛くても、負けてしまったという事実はどうしても変えられない。その痛みを一緒にやってきた人と分け合って。受け止めて、進むしかない。そしてその「負けた」という結果を見て、自分が信じてやってきたことをやめてはいけない。

負けたあとにできること、すごく学んだスピーチでした。

 

約13分の短いスピーチです。ぜひ見てみてください。

スピーチの英語の全文はこちらから読めます →Hillary Clinton’s concession speech full transcript: 2016 presidential election - Vox

 

こちらにもまとめがのっています。


 

追記:とても多くの人に読まれていて、驚いています。

ブクマのコメントを読むのも、色々な意見が聞けてうれしい。
このスピーチがすべてではないし、彼女のいう「正しい」を「正しい」と思わない人もたくさんいると思います。(私もある部分では、そうです)

ただ、1つのスピーチとして切り取ったときに、大統領候補として(自分のサポーターに対して)負けたあとにできるスピーチとしては、これ以上のものはないのじゃないか、とただただ感服しました。それで今回記事にさせてもらいました。

こ先週旅行にいっていた、ラオス北部のシェンクワンという県の記事も、ちょうど今日書きました。アメリカが落とした爆弾の被害が今でも残る場所です。アメリカつながり。もしよかったら読んでみてください。


 追記の追記:

とても美しい全文の日本語訳をされているサイトを見つけたので、こちらもリンクさせてもらいます。

あべこべな世界で逆立ちすると何が見える? — (2016.11.09)...