2月のみかづき。

ジャミラ・リスコット:私の3通りの英語の話し方【1日1TED 言語/語学】

バイディー(こんにちは)

11TED、語学・言語編。今日のスピーチは、ジャミラ・リスコットの「私の3通りの英語の話し方」です。

(原題:3 ways to speak English / Jamila Lyiscott)

1. どんなスピーチ?

教育者であり詩人でもある、Jamila Lyiscott。彼女は、African Disporaについての教育を専門にしながら、人種や教育に関するさまざまな活動を行っています。
"spoken-word essay"と評されるこのスピーチは、「”正しい”英語を話すこと」や「言葉とアイデンティティ」などについて考えさせられる、笑い、皮肉、怒り、希望が入り混じった、力強いものです。

 

2. スピーチの抜粋

スピーカーの Jamila は、家・教室・友達といるときで、かなり異なった英語の話し方をすると言います。それこそ、違う言語を話しているかのように。

世界中のたくさんの人がたくさんの場所で英語を話す今。英語は色々な言語や文化、歴史と交じり合っています。
"articulate” な英語を話すってどういうことなんでしょう?

この articulate というのも訳すのが難しい言葉だなぁ。訳では、”正しい”英語となっています。うんうん。Merriam webster では、

"express oneself readily, clearly or effectively." 

とあります。はっきりと発音したり、適切な言葉を用いて、明確に自分を表現することができる、と捉えます。

ここから、スピーチの抜粋です。

"Yes,  I have decided to treat all three of my languages as equals. Because I'm "articulate". But who controls articulation? Becase the English language is a multifaceted oration. Subject to indefinite transformation. Now you may thing that it is ignorant to speak broken English. But I'm here to tell you that even "articulate" Americans sound foolish to the British. (Laughter)"

(そう、私の3つの言葉をみんな、平等に扱おうと決めたのです。だって私(の英語)は”正しい”のですから。でも、一体誰が ”正しい"を決めるのでしょうか?英語は、とても多岐にわたる言葉で、ずっと変化しつづけています。ブロークンな英語を話すことは、無知なことだと思われるかもしれません。でも、”正しい”英語を話すアメリカ人だって、イギリス人にとっては馬鹿みたいに聞こえてるんですよ。(笑)) 

"So I may not always come before you with excellency of speech. But do not judge me by my language and assume that I'm too ignorant to teach. 'Cause I speak three tongues. One for each: Home, school and friends. I'm a tri-lingual orator. Sometimes I'm consistent with my language now. Then switch it up so I don't bore later. Sometimes I fight back two tongues. While I use the other one in the classroom. And when I mistakenly mix them up, I feel crazy like... I'm cooking in the bathroom." 

(私はいつも素晴らしい言葉で、あなたの前で話していないかもしれません。でも、言葉だけで私のことを判断したり、人に教えられない無知な人だと思わないでください。だって私は、3つの言語が話せるのですから。家、学校、そして友達と、それぞれの場所でそれぞれ違う言葉を持っているのです。そう、3つの言葉の使い手なんです。

時には、今みたいに一貫性を持って話すこともあれば、飽きないように言葉をスイッチしてみたり、2つの言葉で言い返すことだってあります。そうしてもう1つの言葉を、教室の中では使います。間違えて、違う場所で違う言葉を使ってしまうときは、トイレの中で料理しているようなおかしな気持ちになります。)

 

”ブロークン”英語って、言われてみれば、「壊れた」「かけた」英語ってことなんでしょうか。言語に、「基準」「標準」はあるのかもしれませんが、優劣なんてないはず。

 

"And the reason I speak a composite version of your language is because mines was raped away along with my history. I speak broken English so the profusing gashes can remind us that our current state is not a mystery. 

 (私が、あなたの言葉の組み合わせたようなバージョンの言葉を話すのは、私たちの言語は歴史上、奪いさられてしまったからです。私はブロークンな英語を話しています。そしてこの大きな傷は、私たちの今の状況が必然であることを思い出させます。)

How can you expect me to treat their imprint on your language as anything less than equal. Let there be no confusion. Let there be no hesitation. This is not a promotion of ignorance. This is a linguistic celebration. That's why I put "tri-lingual" on my last job application. (Laughter) "

(どうして、私たちの言葉が、あなたたちの言葉よりも劣っていると考えられるでしょうか。誤解をしないように。ためらったりしないで。これは、無知であることをすすめているのではありません。これは、言葉にとって喜ぶべき、褒めたたえるべきことなのです。だから、私は前回出した履歴書に、「3カ国語が話せます」と記載したのです。(笑))

 

 " tri-tongued orator (3つの言語の話し手)"であることを誇りに思う、と。どの”言語”を使っているときだって、"I'm articulate." だから。 

 

3. 新しいことばたち

  • shell where my soul dwells: 言葉通りに訳すと、「私の魂が宿る貝殻」。彼女の肌・肌の色のこと。
  • enunciation: 発音の仕方。宣言。
  • diction: 言葉使い、言い回し。
  • "What's good with you?":  "How are you?"的に使われる。 
  • multifaceted:(宝石など)多面体の、多岐にわたる
  • suburbia: 郊外
  • composite: 各種の要素からなる、合成
  • profuse: 気前のよい、たっぷりの、惜しみない
  • gash: 切り傷、割れ目、(比喩)女性
  • nonsensical: ばかげた
  • imprint: 刷り込まれた、印象を与える、影響を及ぼす

 

4. 感想

このスピーチは、自分の中に入ってくるまでに時間がかかって、何度も見直しました。

個人としては、英語を教えるようになって、"articulate"な英語を話すことへのこだわりというか、それが出来ないことへの恐れが自分の中にあるのを強く感じている、1年半で。「日本人が話す英語」「本物じゃない英語」というような、変な気持ちがまだまだあります。(やーだわ)スピーカーとは違う形ですが、"articulate"であることにとらわれている気がします。

オンライン英会話をやっているのですが、そこでジャマイカの先生と話をしていて、公用語は英語(ジャマイカ英語)ということを始めて知り、「自分の母語は英語に”吸収”されてしまったのよね」というようなことを話されていました。

私たちは、日本語っていう母国語があって、英語は第2ヶ国語として使っています。
でも、たとえばジャマイカの人たちによっては、自分たちの母語であるジャマイカ英語が、「本物の英語に比べて劣っている」「ブロークンの英語だ」と言われたら、そういう態度をとられたら、どんな気持ちなんだろう。

 ラオスにいて出会う外国人。ラオス人、フィリピン人、フランス人、ドイツ人、韓国人、中国人、スペイン人、タイ人、スリランカ人・・・みんな英語で話すけれど、みんなアクセントはぜんぜん違う。

"articulate" であること。自分の気持ちや相手に伝わること。自分の話す言葉や話し方を、卑下しないこと。 うん、まとまりませんが、深いスピーチです。

 

5. スピーチについて

Jamila Lyiscott: 3 ways to speak English | TED Talk | TED.com

Event: TED Salon NY 2014

Date: Feb 2014

Length: 4:29

 

彼女のスピーチを紹介している、TEDの記事です。