2月のみかづき。

【TED インド教育】シュクラ・ボース:1度に1人の子供を教えること

バイディー!ラオスからこんにちは。

今週は「教育」をテーマにした TEDスピーチを見ています。今日のスピーチは、シュクラ・ボースの「1度に1人の子供を教えること」です。

(原題:Shuka Bose: Teaching one child at a time.) 

1. スピーチの抜粋

スピーカーの Shukla は、26年間企業に勤めたあと、今から6年前に自宅のキッチンテーブルで企画を考え、ごく少数の友達と「パラグラマ慈善財団」を始めたといいます。 

どんなことをするかは具体的には決めず、とにかくまずバンガロール近辺のスラム街に入り、そこに住む子供たちや大人たちと同じ時を過ごし、彼らの困難や輝く笑顔に出会います。そんな彼らのために、出来ることをしようと、仲間とともに使命に燃えていたのです。

しかしここは人口大国、インド。課題を示す数字も、挫けたくなるような桁の大きさです。

We were all excited to start, but the numbers hit us then: 200 million children between four to 14 that should be going to school, but do not; 100 million children who go to school but cannot read;125 million who cannot do basic maths. We also heard that 250 billion Indian rupees was dedicated for government schooling. Ninety percent of it was spent on teachers' salary and administrators' salary. And yet, India has nearly the highest teacher absenteeism in the world, with one out of four teachers not going to school at all the entire academic year.

(プロジェクトをはじめるにあたって、私たちは皆、やる気に満ちあふれていました。しかし、数字が目の前に立ちはだかりました。2億人もの、4歳から14歳という学校に通っているべき年齢の子供たちが、学校に通えていません。1億人の子供たちは、学校に行っているけれども、読むことが出来ません。1億2500万人の子供たちは、基本的な計算ができません。2500億ルピーが、政府による教育に対して割り当てられていると聞きました。その内9割が、教師の給料や管理者に対して使われています。それにも関わらず、教師の欠勤率は世界でも1番と言っていいほど高く、教師の4人に1人はアカデミックイヤー中1度も学校へ行きません。)

 

2億人って、日本の人口より多い・・・。そして教師、そんなに学校へ行かないものなのか!こんな大きい数字を見たら、効率よく、出来るだけ多くの子供たちへ支援できることに躍起になってしまいそうです。

しかし、スピーカーたちはそこで1度立ち止まります。

But we dug our heels and said, "We're not in the number game. We want to take one child at a time and take the child right through school, sent to college, and get them prepared for better living, a high value job."

(しかし私たちは、自分たちで決めたことを貫き、「私たちにとって数字が大事なのではありません。1度に1人の子供と向き合い、その1人1人が学校を無事卒業し、大学へと進めるように、そしてよりよい生活や価値のある仕事へ繋がるようにしたい」と言ったのです。)

数にとらわれずに、「1人1人の子供を、包括的にサポートしていく」と決意して支援をはじめていきます。 

主にスラム街の子供たちが学校へ通えるように動いていきます。

国際語である英語を重視したり、最新のカリキュラムを取り入れた授業をつくっていきます。今まで勉強なんてしていなかった子供たちも、「スラムの子供は○○なんて出来ない」というような「迷信」を覆すうな成長を見せます。

そして、子供たちへの支援と同時に、家族への支援の輪も広がっていきます。子供が学ぶ姿をみて、「読み書きを習いたい」という母親を対象とした放課後学校を開催したり。アルコール依存症であった父親のリハビリ、調理師になるための職業訓練をしたり。また学校の職員の90%は、そのコミュニティに住む家族のメンバーから成っています。

Then came the second school,the third school, the fourth school and a junior college. In six years now, we have four schools, one junior college, 1,100 children coming from 28 slums and four orphanages. (Applause)

(そして2つ目、3つ目、4つ目の学校、短期大学の設立へとつながっていきました。この6年間で、4つの学校と1つの短期大学がはじまり、28のスラム街と4つの孤児院から、1,100人の子供たちがこれらの学校に通い始めました。【拍手】)

 

6年間で、手探りにはじめたことが、大きな実りを結んでいます。

 

We also believe that it's the content that is more important. It is not the infrastructure, not the toilets, not the libraries, but it is what actually happens in this school that is more important. Creating an environment of learning, of inquiry, of exploration is what is true education.

(「子供たちに何を教えるか」が大事だとも信じています。トイレや図書館などの設備ではなく、学校で実際に何が起こっているのかこそが重要なのです。学び、探求し、冒険できる環境をつくることが、真の教育なのです。) 

When we started Parikrma we had no idea which direction we were taking. We didn't hire McKinsey to do a business plan. But we know for sure that what we want to do today is take one child at a time, not get bogged with numbers, and actually see the child complete the circle of life, and unleash his total potential. We do not believe in scale because we believe in quality, and scale and numbers will automatically happen.

(パリクラマ慈善財団をはじめたときは、どこへ向かっているのか分かりませんでした。コンサルトを雇って、事業計画を建てることもしませんでした。しかしなにを大事にしたいのかは、はっきりしていました。数に気を取られてしまうのではなく、子供1人1人と向き合うことを大事にしたいのです。そして、子供たちが人生をまっとうし、可能性を最大限に活かしてもらいたいのです。私たちは規模や量よりも、質を重視しています。数字はあとからついてくるものですから。)

 

2. あたらしい言葉

  • mind-bogging: 度肝を抜かれる、信じられないような
  • bogged (down) in/with: 〜で動けなくなる、泥沼にはまる
  • dig one's heels: 自分の主張を貫く
  • hogwash: くだらないもの、でたらめ(豚の餌!)

 

3. 感想

なにもない所からはじまった、このプロジェクト。コミュニティに入って、人々と関係を築いて、そのコミュニティで本当に必要とされていることを、1人1人に向き合ってやっていく。活動の広報を通して、必要な資金を得て、きちんと成果を出している。こういうのが本当の支援なんだろうなぁ。

物乞いだった子が、希望に溢れた夢を語るようになる。すごい変化。

スピーチの途中で出てくる、この学校に通っている子供たちのビデオがあるのですが、本当にいきいきしています(特に最後の女の子!)

そして、スピーカー自身もすごくいきいきしている。堂々としたスピーチっていうより、等身大の言葉で、自身の大事な物語を語るような口調で話す姿に、引き込まれました。 

 

4. スピーチ情報

Shukla Bose: Teaching one child at a time | TED Talk | TED.com

Event: TED India 2009

Date: Nov 2009

Length: 16:23

 

団体ホームページ

parikrmafoundation.org